3児パパの記録

書評、ガジェット、サックス、子育て等、日々思う事を書きます

【書評】伊坂幸太郎「AX」:父親としての想いは職業に寄らず。

最強の殺し屋の仕事ぶりと、仕事から足を洗うべく奔走し、家族や他人との触れ合いから伊坂幸太郎らしい人間観を描く作品でした。amazonでの紹介を以下引用します。

最強の殺し屋は―恐妻家。「兜」は超一流の殺し屋だが、家では妻に頭が上がらない。一人息子の克巳もあきれるほどだ。兜がこの仕事を辞めたい、と考えはじめたのは、克巳が生まれた頃だった。引退に必要な金を稼ぐため、仕方なく仕事を続けていたある日、爆弾職人を軽々と始末した兜は、意外な人物から襲撃を受ける。こんな物騒な仕事をしていることは、家族はもちろん、知らない。『グラスホッパー』『マリアビートル』に連なる殺し屋シリーズ最新作!書き下ろし2篇を加えた計5篇。

主役は紹介の通り、過去の伊坂作品に登場する「兜」という殺し屋。1児の父で、恐い妻を持ち、妻の機嫌を取りながらサラリーマンとして生活し、たまに殺し屋稼業を請け負って貯蓄していく。ハードボイルドではなく、殺し屋という極限状態の精神を持つ人間の感覚が、小説独特の空気の中で描かれています。

私が思うところ、伊坂作品に共通していることは主役や他の人が強い個性を持ったうえで、それぞれ格言を持っているということ。シェークスピアやチャップリンを引用したり、最近のアニメを教訓にしたり、その人が送ってきた人生の教訓を擬えている。そういった格言が出てくると、つい手帳を開いて書き留めてしまいます。そんな伊坂作品なので、兜の想う複雑な、個人としての想いが描かれていて、一気読みしてしまいました。オススメです。